最強の半生菓子 豊製菓 「おふくろ」

今回は当店半生菓子部門のスーパーエース、おふくろをご紹介。

当ブログでは幾度となく、「半生菓子」とか「仏壇スイーツ」をご紹介してきました。

おばあちゃんの家の卓上菓子盆。
あるいは仏壇にお供えしているお菓子。
お葬式、お参りのとき、お寺さんの待合室とかにあるお菓子。
聞いたことのないメーカーで、商品名も知らないけど、昔から誰もが知っていて、なんだか食べたことがある。
地味だしコンビニにも置いている最新のお菓子みたいな派手さはないけど、懐かしくてどこか落ち着くお菓子。

↑そうそうこういう感じに応接間や食卓に必ずお菓子が入ってる菓子盆があると、なんだか安心しますよね。

そういったお菓子を、業界では「半生菓子」と総称して呼んでいますが、最近では「仏壇スイーツ」とか言ってジワジワともてはやされてきました。
大手スーパーでも、だんだん売り場面積、棚本数が増えてきましたし、成城石井や北野エースのような街中にあるオシャレ食料品店でも大いに扱いが増えています。

例えば!

ブルボン ホワイトロリータ

高橋製菓 栗ボーロ

杉本屋 ミックスゼリー

乳菓サンド

小宮山 サラバンド

旅のしにせ (松露 あんこ玉)

一色屋 浜の彩り

亀田のハッピーターンとかも、僕の中ではバリバリ仏壇スイーツの部類なんですけどねー!

ハッピーターンは以前はそれほど注目されず、当たり前のようにどこにでもあって、それこそ葬式のときなんかで見かけては、一袋くらい食べるような細々としたキャラクターであり、それでも皆の心の中のどこかにシッカリとしがみついて離れないようなヤツでした。
ところがネットの拡大と共におそらく誰かが「ハッピーターンって美味しいよね」と言い出し、誰かが「そうそう!俺も昔からそう思ってたんだ!」となり、それが全国的に広がって、サブカルチャー特有の熱気に着火し、一気に大ブレイク。
もはや仏壇スイーツの領域から飛び出して今や超メジャー選手入りしてしまいましたからね。
寂しい限りです。(こっちに戻っておいで)

つまりそういう事が起こりうるほど、大注目されている商品群なんですね。

今後の伸びしろもまだまだ大きいんじゃないでしょうか。
前述のようなアンテナの高い業態、アンテナの高い消費者は飛びついてますからね。
流行りに流されない、昔から変わらぬ品質の良い商品というのは、菓子業界だけでなく近年どの業界においても消費者の意識が変わってきましたよね。

さていつものように長い前置きでしたが、本題の商品レビュー。

この豊製菓さんのおふくろ、なにが最強かって、まず当店の半生菓子部門で最高の売上を誇ってます。
どんな売れ方をしてるかというと、ほとんどがリピートです。
「何かお勧めのお菓子はあるかい?」
と聞かれたら、必ずこれをご提案するので
「ふ〜ん、そんなに言うんならひとつ買って行こうかね」
とおひとつ買っていかれます。
が、その後ほとんど必ずと言って良いくらい
「あれ、美味しかったよ!今日はみっつちょうだい!」
と増量して買っていってくれます。
そんなこんなで、12袋入りのケースが、最低でも10ケースは必ず出ますね、すごい。

ひとまず外観を見ていきましょう。

素朴なパッケージです。

かわいい茅葺き屋根のシールに豊製菓「半生菓子 おふくろ」の文字と原材料の表示。
裏にはシール貼ってません。
黒くて四角いものが20粒ほど入ってそうですね。

ハンズオン。

おふくろの文字と、イラストの簡素な包みですがバランスが良いです。

中を開けてみると

一口サイズの四角いモノが出てきました。
これはつまり、きんつばを砂糖でコーティングしたものなんですね。
そんな甘いものを甘いもので固めちゃって…激甘なんじゃないですか〜?

っという声が聞こえてきますが、これがまた…
普通に甘いんですけど、これ以上甘いとしつこいし、これ以上甘くないと物足りないといった絶妙な甘さ加減。

まずサクっと子気味よく砂糖コーティングを噛み砕き、きんつば部分を味わうと、あんこの風味が豊かですごく上品な感じ。
どれだけ上品かというと温泉宿の部屋に入った時に置いてあるお茶菓子に使われちゃうくらい、高級感あるんですよね。

これが純粋に、「美味しいナー」って感じになりますし、後を引きます。
お友達とお茶を楽しんで入れば、きっと話題に花が咲くと思います。

でも、そんな「おふくろ」も、いずれは食べられない日がくるかも。

こちらが豊製菓さん。

ふつうの自宅に見えますが、見てください。
一斗缶がありますね…これはおそらく水あめか何かでしょう。

間違いなくここで作ってますね。

この豊製菓さん、愛知県の豊田に自宅兼工場を構えている、いわゆる町工場的な半生菓子によくあるパターンで、昔のメーカーはほぼ大体どこもこんな感じです。別に驚くことではありません。
今や名だたる一流メーカー、有名メーカーだって、戦後すぐはどこもこんな感じです。
なんですが、この豊製菓さんは中でも最もミニマムなタイプで、昔ながらのタイプですね。
昔は当店の近所でも、町工場タイプのメーカーさんからいくつもお菓子を買っていたそうですが…

そういうわけで、豊製菓さんはこの「おふくろ」しか作っていません。
さらにこれもよくある話ですが、70にもなる方が、ひとりで作っているそうです。

先日注文してもパタリと入荷されない事があったのですが、どうしたんだろう?
と問屋に問い合わせたところ、なんと

「メーカーさんが足くじいちゃったので、しばらく生産できなくなっちゃったんですよ」

とのこと。

あー……そうですか、お大事にしてください。ほんとに。お早い回復を祈ってます。
もう慣れっこになって別に驚きもしないですが、半生菓子業界は、こういうことだらけです。
それよりも、今回は回復したからいいものの、また転んじゃって、もっと大けがするかもしれないし、今後いつまで製造されるのか、まったく見当もつきません。

いつ食べられなくなってもおかしくないお菓子ということ。

静岡の松田米菓さんという煎餅メーカーがあり、5年ほど前に廃業されてしまいましたが、本当に昔から愛され続けていて、いまだにあの松田さんの塩せんやあじろは置いてないのかと問い合わせを頂くほどです。
半生菓子はこのように1人やご夫婦ふたりで作っているパターンが多々ありますが、静岡の栗ボーロの高橋製菓さんのように、家族経営で従業員数十名いるパターンもあり、いずれにしても家族経営なので、大きなメーカーのように安定はしていない不安定な商品なんですね。

つまり、あって当たり前のように思えて、今ある、今食べられることがとても貴重な商品なんですね。

ああ、先日は梅ジャムの梅の花本舗さんが廃業されましたよね。
カールのときもそうでしたがあの時はメディアでもバンバン取り上げて、無くなる無くなる、食べられなくなるとメディアもデベロッパーもバカ騒ぎ。
今でも1ケース400円の商品が数万円で取引される異常事態が続いていますが(アホですね)

まぁ廃業されて手に入らない、食べられなくなってしまうのは悲しいことですが、だからこそ食べられる今をありがたく思って味わって消費するのが、我々消費者のできること。

こういう話のときには、しばしば後継者がおらず、せっかくの良い商品が無くなってしまうことを嘆く論調になり、後継者問題だとか経済問題とか地域の問題とかになりますよね。
やってる本人からすると、多分そういう事じゃないんですよね。
何十年も、戦後から自分の生業として粛々と生活のため、築いてきた生活の一部であって、世の中のそういう事は関係無いと思うんです。

そりゃ、丹精こめて作ってきた製品が無くなってしまうことを悲しんでくれるのはありがたいでしょうけど
僕はそうなってしまうより前に、美味しいねと言ってパクパクモグモグと食べ、無くなってしまったら、あー美味しかった。
とそう言えることが生産者さんに対して最大にして十分だと思うのですよね。

ちょっと寂しい話になりましたが、無くなったときにバカ騒ぎしないよう、あるときによく味わって頂きたいと思います。おふくろは当店いつでも在庫してますので、ぜひ一度お試しくださいませ!

ABOUTこの記事をかいた人

フリーペーパーの編集、量販店バイヤーを経験したのち、実家の家業である菓子問屋「あまのや繁田商店」を継ぎ4代目に。 旅とバイクとコーヒーが好き。