カール生産終了について、菓子問屋目線で思うこと

衝撃的なニュースが入ってきました。カール生産終了。菓子問屋として思うことは…

~ニュースサイトより引用~

菓子大手の明治は25日、スナック菓子「カール」の中部地方以東での販売を終了すると発表した。8月で同地域向けの生産を終え、9月には店頭から姿を消す見通しだ。滋賀県、京都府、奈良県、和歌山県以西の西日本地域では「カールチーズあじ」「カールうすあじ」のみの販売となる。

 明治によると、スナック菓子の競争激化に伴い販売が低迷。1990年代に190億円だった売上高は2015年に60億円程度までに減少していた。一時は全国での販売終了も検討したが、1968年発売のロングセラーとして広く親しまれてきたことから、地域を縮小したうえで販売を継続することにした。

 カール生産5拠点を松山市の工場1カ所に集約する。キャラクターである「カールおじさん」「カールぼうや」など「おらが村キャラクター」は引き続き使用する。【増田博樹/統合デジタル取材センター】

~引用おわり~
https://mainichi.jp/articles/20170525/k00/00e/020/344000c

というわけで東日本からカールが消えますが、惜しむのはどの層か。

SNSではこぞって終了を惜しむ声が沸きあがってます。
確かに今まであったものが無くなるのは悲しいことで、惜しむ声が上がるのはもちろんなのですが、こんな記事も。

「カールが買えなくなって悲しい!」とアピールする奴に限ってしばらくカールを食べていない説」なども浮上
→ロケットニュース24

http://rocketnews24.com/2017/05/25/905740/

そうそう、確かに思い出補正というのがありますからね、普段カールなんて見向きもしなくても無くなるのは悲しいもんです。
こち亀だって普段読んでなくても連載終了するときはあんなに騒ぎになったのです。
僕自身、カールを最後に食べたのは思い出せないくらい何年も前のことです。
で、菓子問屋目線で考察するに、これは子供の頃カールを食べていた30代以上の人中心の意見なのかな、と思います。

現代のこども達にとってスナックは時代遅れ?

というのも、ウチにお菓子を買いに来る子供たちは、うまい棒しかり、キャベツ太郎しかり、チーズあられにかっぱえびせん、スナックなんて買う子はほとんど居ないんですよ!今の子はスナック菓子なんて見向きもしないんですよ!

じゃあ何を買ってるのかって、代わりにゼリー、グミ、ラムネなどチュルチュルしたもの、口の中で溶けちゃうもの、見た目がキラキラして綺麗なもの、食べるだけでなくねるねるみたいに玩具的な遊びのあるもの、プリキュア仮面ライダーなどキャラもの、そういったものが多いと思います。
どうやらカールに限らず、スナックのような量ばっかり多くて口の中でボソボソするスナック菓子全般は時代遅れのようです。

僕はいま37歳ですが、子供の頃は自分も友達もみーんな毎日毎日スナック菓子ばっかり食べてましたよねー!
キャベツ太郎派と玉葱さん太郎派に分かれてました。
うまい棒はパッケージの開け方で各々こだわりがありました。
カールはちょっとお高くてたまにしか食べられなかったけど、好きだった記憶がありますよ。

つまりスナック菓子というのは質より量、そういった戦後の概念をいまだ引きずったお菓子なのだと思います。

ご飯を残しちゃいけない、お腹いっぱいになりたい、ひもじい思いをしたくない、戦後の子供たちはそういった概念があったはずで、スナック菓子はそれを満たしていたんですね。

「カロリー満点カロリー満点」

このフレーズ知ってます?あの頃のお菓子に、CMやパッケージによーーく使われていたキャッチコピーです。
現代ではカロリーが敵の時代ですよね。
到底考えられないことですが、ほんの数十年前までカロリーというのは宝だったわけです。心底栄養が欲しかったんです。

30代そこそこの人はさすがに戦後のそれではないにしろ、戦後2世というんでしょうか、戦後を生きた親に育てられたので、その感覚を多少なりと持っているのだと思います。
だから外へ行って元気に遊んで、お腹がすいて、公園の売店や駄菓子屋でスナック菓子を買ってはボリボリ食べまくってたんです。

と、そうなると、本当に惜しむというか悲しむというか、危機感を持つべきは

「カールが消えてしまった」事ではなく、スナック菓子の超ロングライフ商品が消えたこと、これからも消え続けること、これが始まりという恐れ、というかあきらめ、というか時代だなぁという感じ

それこそ、そう遠くない未来、うまい棒がなくなる時がいずれ来るかもしれません。
もうね、思い出があろうとなかろうと、泣こうが喚こうが、これはもうどうしようもないんです、皆の記憶から消えてしまって、人知れず消えてきた駄菓子は五万とあります。
今年に入ってなくなってしまった駄菓子だって、思い出しただけでいくつかあります。
販売している者として寂しいし、生産者の事を考えるとまた悲しいもんです。
惜しまれる声が上がるだけ、カールは幸せ者です。

というわけで今こぞってカールを食べようとするのではなく、今あるお菓子、昔からあるお菓子を大切にしましょう。
合掌。

5月26日追記
これに関してSBSからテレビ取材をいただきました!
本日夕方のニュースで取り上げていただけるそうです。

ABOUTこの記事をかいた人

フリーペーパーの編集、量販店バイヤーを経験したのち、実家の家業である菓子問屋「あまのや繁田商店」を継ぎ4代目に。 旅とバイクとコーヒーが好き。