メイキングオブ清水店

というわけでセノバ催事→パルシェ催事→ベイドリーム立ち上げ→決算棚卸という地獄の8月が過ぎ去り、ようやく落ち着いてきましたので、清水店についてもうちょっとkwskやっていこうかと。

まずはいつだか忘れましたが、疲れすぎて社用のハイエース車庫入れバック中に塀にぶつかって傷跡残すの図。(後方左)ガラスまで割れなくて良かった!

スケルトン状態から壁紙だけ貼った状態。
ガランとしていて、本当にこの場所でやっていけるのか不安で仕方なかった。
屋号のロゴタイプを一番奥に配置することは決めていたのだけど、部屋の幅に対してどの程度のフォントサイズにするのか、どの程度の高さに付けるのがベストなのか、どんな材質でどうやって加工して制作するのか、すべて自分の手で手探りでやらなくてはならない。(今回超低コストのため、デザイナーを一切入れなかった)
一事が万事、ロゴだけではなく今後の決め事すべてに対して数ヶ月に渡りそんな調子なもので、脳細胞がミルク粥になりそうでした。

セノバ催事でも作ったんだ!今回も出来るさ!
ということでPC上で写真にフォントを配置したりしてアタリをとって、サイズを決定。

棚は、僕の信奉する、と言ったら言い過ぎだけど、大好きなD&departmentさんと同じものをチョイス。でもここに至るまで地獄の堂々巡りの数ヶ月があってたどり着いたわけなのですが

というかそれ以前に、そもそも論として、何かを作るときにはいきなり詳細から詰めないで、大雑把な様式を決めてから入りなさいと学生時代何度も教授に言われたし!

様式というのはつまり音楽で言うと調ですよね、建築で言うとロココ調とかゴシック調とか。今回ウチが目指すのは、↑のような伝統的な昔ながらのスタイルの駄菓子屋さんではなく、新しいスタイルの駄菓子問屋なわけだ。(と自分に言い聞かせ)

駄菓子というのは、物販の中では相当に特殊な商品らしく、世の中でよく出回っている什器(じゅうき)屋さん、商品陳列用の大手が持っているような棚ではなんとも具合が悪い。

どう具合が悪いかは、駄菓子を実際に陳列したことがある人でないと分かりづらいかもしれないけど、まぁ想像してみてくださいよ。
コンビニが使っているようなああいった棚に、駄菓子みたいな細かい商品を効率的に並べる場合、どうしますか?並べたところでどうなるか?

駄菓子の細かな壁ができますね。

コンビニやドラッグストアの駄菓子コーナーは大抵そうなっちゃってるんですが、アレはお客さんや子供からすると、非常にとりづらい。

かがんで、というよりはしゃがんで見る感じですよね。

その上なにより、駄菓子が魅力的に見えない。
アレはただ並べているだけであって、魅力的に見せる陳列とはかけ離れているように思う。

その点、↑のような伝統的な駄菓子屋スタイルの駄菓子什器というのは、さすが何十年もトライアンドエラーを繰り返してきたことの結果なのか、非常によくできてる。

若干傾斜のL字というか、垂直の棚と平台を組み合わせたような特殊な形状をしてます。
こんな形の棚、駄菓子以外で見たことないんですよ。
昔は町の大工さんに作ってもらってたんでしょうね、ウチの昔の店もそうでしたし。

これが、駄菓子コーナーを作ることのハードルを上げている一番の要因だと個人的には思います。

が!
今回その伝統的なスタイルから逸脱するのがテーマのひとつなのですよ!
アレだったらこんな風とか!

こんな風とかに憧れちゃってるわけですよ!
個人的な趣味の世界でもあるのですが。
まぁ本店も一応一時はこの路線を目指したので、それもいいかと。

で、結論としてはこう。
いつもの背の高い工業用スチールシェルフにはまとめ買い用として箱や袋を配置。
バラ駄菓子はすべてマス状の平台什器に集約。

これによってウチは駄菓子屋ではなく、駄菓子問屋だということを主張。
そもそも駄菓子問屋って、昔からこういうスタイルなんですよ。


箱買い、まとめ買いのできる駄菓子が天井に届くほど壁面の棚にうず高く積まれていて、中央の平台には平置きに向くお菓子や玩具、台紙系の商品が積まれてる。

今もこのスタイルを踏襲したわけですが、結局のところ、本店やセノバ店と同じです。
というかむしろ僕にはこれ以外のこといきなりやれと言われてもまずできないし。

そういうわけで、そういうものを使いました。

天井にぶらさがる特徴的な照明は、実は本店が新築されたとき、ケンブリッジ藤原さんが取り付けてくれようとしてたけど、何故か付かなかった曰く付きのアイテムで、本店含め当店のデザインアイデンティティともなり得るアイテムだと思っていたので、僕としては念願叶ったり。

ついでに本店にも取り付けときました。
4年越しに、コレでやっと完成形。

あらかじめ作成した棚割にしたがって、商品を配置。

アタリをつけて配置して、あとで修正。

popを貼って、商品と価格に間違いないかひとつひとつチェック。

popはラベルプリンタで一括印刷。
と言えば簡単そうに聞こえるが、コレを作るのに取扱商品のピッキング作業から商品台帳作ってちゃんとしたデータベースになるよう数値調整して、プリンタの調整、テスト、ラベル幅、色、粘着度の選定、サイズの決定とか思い出しただけでゲロが出そう

しかし一番悩んだのは間違いなくレジ。
一般的なメカレジと最近流行りのクラウドポスレジ。

こんなんもう本店から悩んでるんで、軽く5年越しの悩みなんですけど、今回で終止符を打つため、リサーチにリサーチを重ね、どちらも同時購入し

セノバ催事と

パルシェ催事で試験的に同時運用。(写真はどちらもセノバだけど)

どちらも一長一短どころか百長百短くらいあるんですけど、お互いのメリットデメリット徹底的に洗い出してみたところ、徹底的に洗い出しすぎて情報過多に陥りまたも脳細胞がトップギア。

駄菓子はレジスピードが命で、モタモタしてたらお客さんは逃げちゃうので、普通のスーパーみたいにピッピッとスキャンなんてしてられない。
商品価格はすべて記憶して、10円が◯点、20円が◯点と価格ごと手打ちがこれまで絶対不可侵の基本のきだった。
それを前提とするならば、タッチのスピード、正確さや電源さえ入っていれば動く機器自体の堅牢性を取ると、間違いなくメカレジなのは分かっていたのだけど、どうしても未来的なクラウドポスレジが捨てきれなかった。

クラウドポスレジは、見た目の新進性もさることながら、いつどんなガジェットからでもデータにアクセスできるので、商品登録や売上データ管理、決済などなど実にさまざまな機能が魅力なのだけど、一番はやっぱりその見た目。ウチは新しいこれからの未来のスタイルの駄菓子問屋だ!と言い張らなきゃいけないからだ。

クレジットカード決済はもちろん、電子マネー、Apple PayにAmazonペイ、交通系カード、QRコードなど群雄割拠の決済サービスにもほとんど対応するし、先進の物には先進のサービスがくっついてくる。

そんなこんなで、これもう実際に使ってみるしかないってことで使ってみて、それでもさらにギリギリまで悩んで、結局クラウドポスに決定。

今ではこれにして良かった!と思ってる。

ガラスケースはネオレトロな雰囲気と鰹節の香りの漂う、近所の鰹節やさんから貰い受けたものを使用。

Illustratorで出力した紙をスチレンボードに転写して、ヒートカッターでカットという信じられないテクニックを披露してくれた協力者のおかげで、フォントサイズに関して一部で揉めに揉めたものの、一応の収束を経て製作完了。

陳列陳列ゥ!

ロゴは最後にとっておいて

全体調整して(もう帰りたい)

荒い部分を残しつつ、完成手前。

オープニング特注の半生菓子を用意。

そうそう、この床もめちゃくちゃ悩んだ末の仕上げ。
前のテナントさんの床ひっぺがして磨いただけなんですが、普通に考えればあり得ないこと。普通は何か床材貼ったりします。

今回とにかく予算がなくて貼れなかったことと、もし商売うまくいかず退店しなければならないとき、現状復帰費用すら節約できること、と涙ぐましい思考の末の決断でした。

でも昭和初期の駄菓子屋や問屋なんて、みんな土間を改造して店にしたので、当然お金の無い中での店づくりが当たり前だっただろうし、だいたいこんなもんなんです。

バラ並べーの

いいんじゃないでしょうか。(10時間後に開店)

台紙系当て物ができるのも特徴(普通はやらん)

これとか

串物もバラで購入可能(普通はやらん)

ほぼ完成(開店まで9時間くらい)

完成の余韻にひたる(早く帰って寝たい)
このレジ台も、寸法や材質、工法を指定して大工さんに作ってもらったお気に入りの一品。

レジいいですねやっぱ。駄菓子屋のクセに最新のレジってとこが良いんですよね!人は皆ギャップに萌えるのです。

オープン一時間前

シンメトリーを目指すも、ちょっとだけズレてる気がする。でも今となってはぜんぶ自分たちでやったことの証明と思えば可愛く思えてくる。

お菓子詰め合わせのサンプルと

自作のカタログを配置

そしてついに開店してから(特にオープンです!パパーン!的なセレモニーもなにも無く、おごそかに開店)

しばらくはこんな状態でした。

身うごきがとれーん!

いや嬉しい限りです。
今回ショッピングモールへの初出店ということで、わからない事だらけだし、うまくいく保証も無いし、こんなスタイルの店は全国どこにも無いから、店づくりもなにもかも参考になるものは無く、とにかく一から十まで手探りの連続だった。

参考になったとしたら、昔ながらの菓子問屋。

そうだ、ウチは昔ながらの菓子問屋を、現代版にアレンジして蘇らせればいいんだ、と思った。

昔はどこの町内にも駄菓子屋が一軒か二軒あって、みっつの町内には一軒くらい駄菓子問屋があった。

翻って現代では、皆口々に「駄菓子屋さんも無くなってきたからねー」と言うけど、実は知らないだけで新しいスタイルの駄菓子屋さんの開業が非常に増えてきてる。
反面、菓子問屋は消滅寸前だ。

ここ数年で流通が激変、ウチですら商品の入手が困難になってきてる。

メーカーも少なくなってるし、大きめの一次問屋は巨大な商社に吸収され、大手スーパーやコンビニを得意先とし、ウチみたいな二次問屋は相手にしなくなってきたのが理由だ。

末端の駄菓子屋が増えつつあるのに、供給する問屋がない。

このぽっかり空いた穴を埋めるのって、ウチの役割でありチャンスなんじゃないかなーと、思っています。

このブログのサブタイトル「現代の駄菓子問屋がどうあるべきか、模索します」の通りの方向に動き出したことが、自分としてはとても嬉しいです。

ABOUTこの記事をかいた人

フリーペーパーの編集、量販店バイヤーを経験したのち、実家の家業である菓子問屋「あまのや繁田商店」を継ぎ4代目に。 旅とバイクとコーヒーが好き。